ハーゲンダッツのナッツが入ったアイス
北上さんは学生の頃から社会人一年生にかけて付き合っていた彼がいた。 「うちの学科で一番センスが良かったの。服装も音楽も。私は田舎者だったから垢抜けてる彼が眩しく見えたの」 同じ学科に元カノが二人いたが、気にしなかった。 「やっと私の番がめぐってきたって思って」 彼は自室でトカゲを飼っていたが、それすらも魅力的に見えたという。...
View Articleぶぅん、ぶぅうん
鈴沼がかつて住んでいたアパートの裏手には雑木林があった。 「大学が東京の郊外にあったから、近場でいいやってそこにしたんです。それにすごく安かったから仕送りを他のことに使えるなって」 引越し当日、荷物の整理にひと段落をつけると腰をあげた。 「うちの親、礼儀に厳しいから絶対に挨拶しとけって言われたんです」 小さいアパートだったので鈴沼の部屋がある二階には隣一室しかなかった。...
View Article外食苦手
大学生の垣之内くんは外食が苦手だ。 「虫入るじゃないですか」 まぁ気持ちはわかる。私も経験あるが、ご飯の中に羽虫が入っていることが稀にある。 「のぞいたら食べれるでしょ」なんてことも言われるが、例え小さな虫でもそれ以上箸をすすめることはできない。 だがそれを理由に外食全般が苦手になることはいささかオーバーではないだろうか。 「違うんです。全くオーバーではありません」...
View Articleカナ ブンブン
今年の夏はカナブンが多いと聞く。 大成さんがある日家に帰ると、玄関ドアの隙間にびっしり、カナブンがたかっていた。 思わずその場で飛び跳ねた。 (蜂蜜でも塗られたのか?) 気色の悪い光景に誰かの悪戯を疑った。 蟲は部屋に入り込もうとするかのように、ひっきりなしに蠢いていた。 怖気を抑えながら眺めていると、蟲に意思があるように見えてきたという。 ふと大成さんは思い出した。...
View Articleサンマリンジュース
村山は七年前、チラシのポスティングのバイトをやっていた。 アルバイトの回転が速い職場だったので、一年働いた村山はベテランと呼ばれる存在になっていたという。 「だから遠くまで行かされんだ。会社は渋谷だってのに、青梅や大和まで行かされるんだ。原付で。荷台にチラシを山ほど載っけて」...
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